本番の四十分前。
私は、ようやく鏡に向かう。
ステージに立つために、化粧をする。
正式演出前四十分钟。
我终于面对着镜子。
为了登台而化妆。
紫色のアイシャドウ、淡いピンクのルージュ、アイライン、マスカラ……。鏡の中の私が変わっていく。手にとるように違う女になっていくのがわかる。しかし、私は、この瞬間が一番嫌いである。化粧するということが大嫌いなのである。
仕事柄、化粧を全面的に拒否はできない。顔色の悪さをカバーするためや、曲のイメージに合った表情を作るためには、避けられない作業である。
紫色的睑黛、淡粉的口红、描眉笔、睫毛油……镜子中的我渐渐变了模样。我知道自己明显地变了。但是,这一刹那间是我最不喜欢的。我非常厌恶化妆。
由于工作关系,我不能全部拒绝化妆。为了遮掩不好的脸色,为了作出与歌中形象相符的表情,化妆是不可免的。
六歳の頃、初めて紅をさした。友達の家へあがりこんで、その子の母親の鏡台に向かって、ふたりで濃い色の口紅をさした。戸に鍵をかけ、昼間だというのにカーテンを閉めて、
「みつかったら、しかられちゃうから」と内心ヒヤヒヤしながらも、ふたりともお化粧をするという誘惑には勝てなかった。
六岁时,我第一次抹了口红。我到一个小朋友家,对着她母亲的梳妆台,两个人都抹上了浓浓的口红。我们把房门锁上,虽是大白天,还拉上了窗帘。
“要是被发现了准要挨骂的,”两个人心里担惊受怕的。却都无法战胜化妆这个诱惑。
鏡に映し出されたふたりの顔は、おかしかった。幼いままの目鼻だちの中に、小さな唇だけが異様に赤く目立っていた。けれど、幼い心はときめいていた。「大人みたい」になれた喜びを、見慣れない顔の自分を通して噛みしめていたのである。
あの頃は、七五三や夏祭りの日に白いおしろいを鼻にひとすじスッとひかれただけで、何か新鮮な刺激をうけていた。
镜子里照出来的两个人的脸挺滑稽的。在小小的五官当中,只有小嘴唇红得特别显眼。然而,两颗幼小的心灵可激动啦。从初次化妆过的自己的脸上,我们仔细享受着当了“大人”的欢欣。
小时候,逢到七五三和夏祭日,在鼻子上只擦一道白香粉,就感到某种新鲜的刺激。
化粧が好きとか嫌いとかいう以前に、顔に色をさすということが刺激的だったのだろう。それは、どこか誇らし気な行為でさえあった。化粧をする----それだけで、大人になれたような気がしてしまうし、そう信じ込んでしまう。私が職業として、化粧をしなければならなかったごくはじめの頃は、わずかながらそんな気持ちがまだ残っていたような気がする。
在谈论喜欢不喜欢化妆的年纪到来以前,大概在脸上涂点颜色就很有刺激性了吧,甚至还有些扬扬得意哩。——只是一化妆,我就感到并且也相信自己成了大人。当我刚刚开始由于职业需要必须化妆的时候,我觉得仍然保留一点点那种心情。
十四歳。自分のブロマイド用の写真撮影のために、連れて行かれた浅草のスタジオ。まず、何枚かポラロイドを撮った。
「眉尻がライトでとんでしまうから、少し足してください」
そう言われて、化粧用のペンシルを渡された。鏡の前に座り、自分の眉に黒いペンを入れ始めた。
十四岁时,为了拍摄自己的演员照,我被带到浅草的一家摄影室。先照了几张快速照片。
“眉梢会叫灯光给抵消的,再加重一点吧。”
我接过递过来的化妆用描眉笔,坐在镜子前,开始往自己的眉毛上描黑。